子供が生まれた直後に、夫がなすべきと感じたことのメモ。「夫は自主的に動かない」という意見に適切に答えるのは自主性ではなくて反射神経だ、とかそういうお話し。

これは妊娠期における父親の役割の続編です。

世の中の大半の父親が、数十年にわたり背負う十字架を生んでしまう新生児期

こんなツイートを見かけたわけです。

どうあがいても墓場までついてくる汚点が複数持たれてしまう減点法の戦線なのは 間違いないことのようです。とはいえ、よりベターな状態を作るための話をしたいな、と。

よく「主体性が大事」というが、その内容は男性が仕事で出会う「主体性」とはことなる

今日(加筆している2017-09-13)のニュースでもこういうことが言われていたのですが、

また、理想のイクメンはどのような父親かとの質問に、女性は「妻に言われなくても家事や育児をする」が半数以上を占め、女性は、口に出さなくても自然に家事や育児に関わる主体性を父親に求める傾向が強いことがわかりました。

(そもそも2人ぐらしのときに適切に家事分担をしていない人は論外で、それは「主体性を持て」なのですが) 子育てで出てくる「主体性」というキーワードが、仕事上で「主体性」を求められたときの対応をしてしまうと、 よりすれ違いが増すと感じたのです。

仕事上での「主体性」は、単なる「率先」する行動だけではなく「先読み」も求められますが、 限られた時間の中でより多くの「成果」を出そうとすると、「適切に情報収集・分析して状況を把握し、 効率的に手戻りのない手法をとる」方向に向かいがちではあります。

でも、それでは希望を満たさないというのはこの言葉に表れているな、と思います。

夫について、指示されると子どもを公園やプールなどに遊びに連れて行くものの主体的に育児には関わっていないと感じていて、「講座に出たら家事や育児を自発的にしてくれるようになると期待して送り出したのですが、全く変わっていません」と夫への不満を話していました。 (snip) 夫が長女の保育園入園の「保活」に一緒に取り組み、子どものことをしっかり考えていることについては高く評価していると話していました。

この場合だと、「講座」では、おそらく「より効果的で手戻りのない」手法を教えると思うのですが、 それをかけ算しただけでは望みの状態にならないことが現れていると思います。

(では、なぜ「保活」では評価されるのか、については、文章の最後で述べます)

それはなぜなのか、自分が子供の出生後2ヶ月目ぐらいから感じている仮説を書いてみます。

出生直後に大切なのは「非効率なまでの脊髄反射」

出生直後の子供に対しては、とにかく「反応速度を高めること」が求められます。

生まれた直後は、少しでも対応が遅れることがクリティカル、という場面が続きます。 少し経っても、生後1ヶ月くらいは、2時間おきの授乳が必要です。 その間、母親は「気の抜けない、ほとんど休息がとれない状態」が続きます。 出産直後に母親スイッチが入った母親は、子供のどんな小さな鳴き声や、荒くなった呼吸も 検知して起きてしまいます。

そういう状況では、もうろうとしていても子供の世話が出来るように、 もはや「脊髄反射」に近いような対応をするようになる(少なくとも、スイッチが入るまでに タイムラグがある父親からはそう見えるようになる)のです。

(脊髄反射との違いは、インプットに対するリアクションが一定ではないところにあり、 故に「脊髄反射」的じゃない方がよい、と逆に捉えてしまいやすいのですが)

そんな中で、少しでも「このやり方でよいのかな」と妥当性を検証してたり、 「長期戦になるから体力も考えながら…」と効率性を考えていることは、 スイッチの入った母親からは、もはや敵視されても仕方がない、と映るのです。

「妥当性や効率性よりも脊髄反射が求められる」 のです。

結果論として「脊髄反射が妥当な行動」になる

じゃあ「おれっちが考えたやり方の方が効率的だと証明して理解して貰おう」と、 通常のお仕事モードの男は考えてしまいがちです。

でも、 脊髄反射する方が正解になりやすい んです。

なぜかというと、子供は猛烈に成長している中で、インプットに対するリアクションは、 日々変化します(日々どころではなく分単位秒単位で変わるようにも感じられる)。

加えて、子供へのインプットの回数・量は、よほどのことがない限り、母親の方が 圧倒的に多いです。そうなると、子供の中では母親の対応に合わせた学習が進みます。

すると、結果論的に父親は常に「不正解」となってしまいます。 「脊髄反射」で「正解」を出している側から見れば不満は出やすいし、 加えて、「明確なミス」は永遠に非難されるという。

そこで妙に真面目に「学習しよう」と頑張ると、反応速度が落ちて不満に思われ、 選択肢が外れたときには「遅い上に不正解」と思われるようになる。

下手に気合いを入れてると、「気遣いをしたら裏目…」と、かなりモチベーション落ちて、 反応速度が落ちて、余計モチベーションも落ちて…と悪循環に入ることもあります。

例えば、母親の好みに合わせて熱いお湯が好きになった子供を想定して、教科書的な上限の40度よりも 熱い温度になるよう、お湯を準備してから冷める速度も考慮して高めにしつつ温度計みて過学習して 沐浴を準備したら、やや冷ますのが足りなくて子供が熱がったときに、殺してやると言わんばかりの 反応をされ、「熱がったときに入れた温度計の温度でこの前は喜んでたじゃないか」と言う反論を 飲み込みつつ、これたぶん死ぬまで言われるんだろうなぁ…と落ち込み、2週間くらいしてから 自分の実家に帰ったときに(世間一般では手を組みにくい嫁姑関係であっても)共同戦線張られて 蒸し返されて、更に落ち込むという。

でも、ここら辺で明確に気づいたのは、「ああ、そういう意味での気遣いが求められてなくて、 即レス脊髄反射をすればよく、『高い満足』を目指すのではなく『危険回避』だけすれば ええ のか」ということだったわけです。

それって仕事では「理不尽!」って怒るやつじゃないの、と思うかも知れないが、生まれたての命だから仕方ない。

たぶん、会社でこんなコトされたら理不尽と思われるやつですよね。

ですが、仕方ないんです。生まれたての命ですから。

とにかく、 的外れになることを恐れず、動く、動く、動く。 よほど不器用でなければ、たぶん動いてる間に腕前は良くなります。 どうせ1回でも怒られたら数十年もの、数回怒られても結果は変わりません から、 ミスを恐れず、動く、動く、動く。

子供に接するときは、しばらくは過学習を避けましょう。 生死に関わらない、機嫌とかに関することは、毎日学習結果をリセットする くらいに、 その日その日の子供の反応を見て、対応しましょう。

あと、母と父の一対一の対決はお互い不幸です。 出来ることならば、妻の実家を頼りましょう 。頼れる関係にしておくのも、事前の準備で大切です。

「そんな、仕事も大変なのに!」と思うかも知れないが、仕事を先に効率的にしておけ。

「そんな、仕事ですら理不尽で非効率なのに、家でも!? そんなことなら家に帰らんわ」っていうのが、 昔の男性だったのかなぁと思わないでもないですが…

私はこう思います。 「少なくとも出生から3-4ヶ月は仕事は異常なまでに効率的にして、効率を気にせず育児をしよう」

回りを含めて、急に仕事を超効率的にすることは難しいですから、生まれる前から「理不尽なことがない」体制を つくって備えましょう。

前の記事 妊娠期における父親の役割 で、 悪阻の時期から付き添いましょう、と書きましたが、その時点でもすでに「効率的な仕事」は求められているはずです。 その時点から備えておけば良いのだと思います。

別に、仕事が効率的になるのは、子供の有無にかかわらず、悪いことじゃないですよね? 残業代が減る…という人も、まあ、効率的に片付けてからバレないように遊んでいる、という方が、 ムダにだらだらやってるよりは楽しくありませんかね(後ろ向きな思考…)。

自分の場合は、直接仕事上は準備は出来ませんでしたが、より効率厨になったなぁ、 効率を上げるための頭の回し方はより早くなったなぁ、と思います。 (それを帳消しにしてくるのもいるのが悩みの種ですが…)

じゃあ永遠に「脊髄反射」なのかというと、そうでもない。「全体最適」を考えて動いて感謝される日が来る。

とはいえ、どこかで脊髄反射から全体最適に切り替えた方がよい場面が来ます。 どこでどのように「落ち着いて対処しても大丈夫、その方がよいね」と思って貰えるのか。 人によって状況はことなるのでなんとも言えませんが、たぶん2つ方向はあります。

  • 母親が余裕が出てきて「先回りするが故にスタートが遅れるリアクション」を余裕をもって見れるようになる
    • 子供の睡眠サイクルができはじめる3,4ヶ月目あたりとかはあるかもしれません
    • 産後の肥立ちの観点でも4ヶ月程度でしょうか。
    • 保育園に預けるなどもきっかけになりそうです(生後8週から預けられる、とはいうけれど、大抵は3,4ヶ月か)
  • 「先回りした、全体をみた活動の方が成果がでる」イベントが起きる
    • 冒頭に述べた「保活」なんかはよい例に思います。母親の体力・父親の時間が短い中で最大限の成果を上げる活動ですから。母親の余裕が生まれる相乗効果もありそう(ただし、職場復帰とセットなので帳消しの可能性もあるが、前進ではあるので感謝はされるはず。
    • 子育てに合わせた転居なんかも、「裏でいろいろ備えておいて、動く!と決めた瞬間に動ける」ことは、母親・父親が共通して感じる成果だと思います。
    • 他が思いつかない。幼稚園のお受験とかまで間が空くと困るのではないか、とは思いますが…

というわけで、

「先回りして考える主体的な行動」は進めつつも、「先回りしたと思えるくらいの反応速度の脊髄反射」も鍛えましょう

というのが結論になりそうです。

とか長々と書いたけれど、端的に表しているツイートにぶつかった(のがこの記事を立てた日だった)

なんかこちらに全て凝縮されているなぁ…という。

まだまだ効率的に状況を語れていないようです。